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組手什(くでじゅう) 東日本大震災における組手什が果たしてきた役割

組手什とは?

「組手什(くでじゅう)」とは、長さ2メートル、幅39ミリメートル、厚さ15ミリメートルの杉材に40個の切り欠き加工がされた部材を用いて、自由にかつ簡易に組み立てることができる家具キットです。

切り欠き(凹部)同士を組み合わせながら組み立てていく

組手什の3つの特徴

  • 誰でもカンタンに組立出来る = 小学校低学年からご高齢の方まで幅広い年齢層で組立が可能です。一人でも組立できますが、複数人のチームで作業することで、より効率的に組み立てられるだけではなく、コミュニケーションの向上にも役立ちます。
  • 現地の状況に合わせて様々な家具を組立出来る = 避難所等の状況は各所ごとに大きく異なります。規格サイズの棚では対応が困難な事が多くあります。組手什は長さをカットしたり使用本数を調整することにより、奥行きや幅、高さを自在に調整出来ます。
  • 接着剤を使わないため、組立→分解→再組立が可能 =大規模災害のときには、時間軸の変化で避難所から仮設住宅、恒久住宅へと移り住むことになりす。その為、避難所で必要としていたものが仮設住宅や恒久住宅では使う事が出来なくなることもあります。しかし組手什は容易に分解でき、さらに長さをカットしたり新たなパーツを加える事により、カタチを変えて再度組み立てる事が出来ます。

さまざまな家具を自在に組み立てる事が出来る

東日本大震災における活用事例

1.避難所の間仕切りとして

避難所での生活は、間仕切りがないため24時間解放空間の中での生活を強いられており、身体面に加えて精神面でも過大な負荷がかかっている状況でした。

また、物を収容する場所も少なく居住スペースを圧迫していた。そこで国土緑化推進機構の緑の募金を活用して、この組手什を避難所の間仕切りとして使って頂く活動を行いました。

宮城県・石巻高校の避難所に設置された組手什

プライバシーの確保という事で当初は、組手什で製作した高さ1.5mから2mの物置棚兼洋服掛けで個々の居住スペースを囲う事を計画していました。しかし実際には(地域によって異なるでしょうが)、就寝や座った際に隣人と目線が合わない程度の高さとする事で日常的なコミュニケーションが出来る上に、目が行き届くよう避難所全体が見渡せる事が望まれました。また避難所は多くの物であふれていました。支援物資だけではなく倒壊した自宅から持ち出すことが出来た家財、靴や衣類、そして亡くなられた方の御遺骨まで。

組手什の棚はスペースの間仕切り、小物の整理、通路の確保のすべてをこなす

これらの物たちの置き場が定まらないため居住スペースを圧迫していただけではなく、通路の確保もままならない状況でした。この現状を踏まえて、1m程の高さの棚兼間仕切りを基本サイズとして長さを1mと2mの2種類としました。棚板の数や奥行きは組手什ならばいかようにも調整出来ます。

2.組立はみんなの手で

組手什による棚の組み立て作業を、避難所でのイベントとして組み入れました。組手什はちょっとしたコツを理解すれば子供から年配の方まで簡単に組み立てる事が出来ます。さらに複数人で組み立てる事により近隣の方同士のコミュニケーションにもつながりました

宮城県・山元町旧坂元中学校跡仮設住宅での組立
宮城県・唐桑での組立
宮城県・加美町中新田交流センター避難所での組立
岩手県・住田町仮設住宅での組立
岩手県・越喜来山村コミュニティ 仮設での組立

3.現地で必要な物を、必要なだけ、現地でつくる

皆で組立を行う中で様々な活用アイデアが出てきました。例えば子どもが勉強する為の座卓がないという事でその場で文机をつくったり、情報スペースとして配布物を並べたり掲示ができる棚がつくられる等、避難所で真に必要なものが自分たちの手で次々と作られていきました。

情報スペースの掲示板、配布物の棚を作成
長期化する避難生活の中で子どもの学習机が無いとの意見を受けて、その場で机を作成 ~宮城県・加美町中新田交流センター避難所

様々な場所で活用して頂きました

南三陸町・ベイサイドアリーナ避難所~各地からの支援物資が受け入れられる中で、組手什棚を用いて、用途、サイズ等を細かく分類しながら被災者に適切に配布できた
宮城県・公立志津川病院仮設診療所の薬品棚を組手什で作成
災害支援の拠点における備品類の整理棚として~宮城県登米市・RQ市民災害救援センター
宮城県・サンピア仙台での寄贈
宮城県・平成の森仮設住宅に設置された組手什の棚
仮設住宅団地では、みんなで共同で組み立てて、それぞれの住まいに持ち帰りました
岩手県・復興の湯~少しの組手什があれば、棚を作ることが出来、集いの場を整える事ができます
避難所のパーテーションとして組手什の棚を活用すれば、物の整理が行えるだけではなく、通路の確保にも役立ち、安全で少しでも快適な空間作りが出来ます~宮城県・石巻高校の避難所

東日本大震災の復旧期に、各所で組手什が活用されてきました。この取り組みが多くの方の目にとまり、以降、様々な場所で組手什が活用されています。

宮城県名取市の市立図書館が震災により建物に甚大な被害を受け、震災の約2か月後から車庫や自動車図書館などを利用して臨時開館していた中で、日本ユニセフ協会やsaveMLAKなどの支援をうけて、「どんぐり子ども図書室」「どんぐりアンみんなの図書室」が開館しました。この図書館にも木製組立家具キット組手什による本棚が設置されました。

重量のある書物をしっかり受け止める耐久性があります
図書館の書架を皆で組み立てる。今までにない取り組みとなりました

宮城県の"登米市立米川小学校みどりの少年団"の活動の一環として、組手什の製作が行われました。

小学校低学年から高学年まで、助けあいながらの作業は、貴重なグループワーク体験となりました。

日本最大級の環境展示会「エコプロダクツ展」の展示用什器としても、毎年組手什が活用されています。

組立→分解→再組立が可能な組手什の特徴を活かし、毎年再利用が行われています。

店舗の什器としても、組手什は最適です。

木目が美しくリズミカルで軽やかな組手什は、商品を引き立ててくれます。

半端になってしまった組手什だって、ムダには出来ません。子どもたち用の木製玩具に最適ですよ

Credits:

組手什おかげまわし協議会  /  公益社団法人国土緑化推進機構